こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。
ここ数年で、江戸前鮨はブームになりました。しかし、ブームは既に終わっていて、高い人気が定着している感があります。昔から「鮨の人気を高めよう!」と活動してきた筆者にとっては、理想の世界が到来した…と感じています。20代から節約して鮨・寿司を食べてきて良かったな、とも。
そして、全国の中でも福岡県は全国的に見ても鮨人気が高い「鮨激戦区」です。全国から鮨好きやグルメを惹きつけ、鮨のために福岡旅行をする人も多いほどです。
ただ、お店の数が増え続けた結果、福岡県在住の人でも、「どこに行ったら良いのか分からない!」という声を多く聞きます。また、「お店の選び方が分からない…」とも。鮨は高級な料理なので、外したら精神的にも経済的にもダメージが大きい料理ジャンルです。そこで、本記事では、お店選びの参考になるような「ある視点」を伝授します!
その視点とは…系譜です。
「系譜」なんて渋い、と思うかもしれませんが、お鮨屋さん選びで有効な視点なので、是非とも参考にしてみてください!
また、鮨と聞いて気になる価格についても、お店を選べば問題ありません。紹介するお店は多岐に及んでいますので、ランチに行けば超リーズナブルなお店もあります。僕も、20代から節約しながら鮨を食べ歩いていますので、リサーチ力とお店の選球眼さえ身につければ、鮨も恐るるに足らず!です。
この記事を書いた人
すしログ(大谷悠也)
https://sushi-blog.com/
鮨研究家、文筆家、ブロガー。寄稿、テレビ出演多数。鮨・鮓・寿司の人気を高めるべく「すしログ」を運営し、全国を精力的に回る。日本国内外で6,000軒以上の飲食店を訪問。鮨店だけでなく市場や生産者、醸造家のもとに足を運び、自ら調理を行う。 食材と調味料のブログと日本酒専門のブログも運営。
知っておきたい!福岡における鮨(寿司)職人の系譜
系譜を細かく見ていくとキリがありませんが、ざっくりと2つに分ければ問題ありません。
それは、「福岡のお店の系譜」と「東京のお店の系譜」です。
「福岡のお店の系譜」の特徴は「江戸前鮨と福岡の鮨文化の折衷」で、「東京のお店の系譜」は「江戸前鮨の要素がより強い点」が特徴になります。
また、お会計については「福岡のお店の系譜」の方がリーズナブルな傾向があります。ランチも提供されていることが多いので、若い方も気軽に使えるお店があります。
どちらにも異なる魅力があり、意識して巡るとちょっとした違いが見えて面白いはずです!
また、系譜でお店を訪問すると、思わぬメリットがあります。…それは、鮨がさらに楽しくなり、他のお店にも訪問したくなることです!
実は、美味しい鮨って、ラーメンやカレーなみに個性がバッチリ表れるもの。しかし、ネットでよく見る「コスパ最高の寿司○選」などでは、鮨の本当の魅力を感じることは難しいのが現実です。
正直なところ、「安かろう悪かろう」なお店も入っていることが多いです。しかも、安いとは言ってもラーメンやカレーよりは高いため、外すとダメージが大きいのが鮨…。「コスパ最高」なお店数軒分をまとめて、上質なお店1軒に充てた方が、絶対に人生の幸福度がアップします。
なので、系譜を踏まえ、きっちりと修行している職人さんが開いたお店に行くと、外すリスクを下げるとともに、他の美味しいお店を知ることができます。
自分にとって美味しいお店を見つけた時は、ぜひとも親方(大将)に「オススメのお鮨屋さんはありますか?」と聞いてみてください。ちゃんと鮨・食を愛する方ならば、オススメを教えてくれるはずです!
それでは、まず「福岡の鮨店の系譜」について、ご説明します。
福岡の鮨店の系譜とは
福岡のお店の系譜でご紹介するお店は以下の3軒です。
全て若手の実力者なので、ハズレはありません。
- 鮨 香坂(やま中、2001年オープン)
- 鮨処 石ばし(吉冨寿し、2014年)
- 鮨 唐島(鮨 安吉、2018年)
カッコの中は、修行先と独立された年です。
ここで着目したいのが、「やま中」と「吉冨寿し」です。
「やま中」は1972年にオープンした、福岡では歴史がある鮨店です。みずから「鮨と日本料理」を謳っている鮨割烹ですが、ここ数年、有望な職人さんを輩出しています。
- 鮨 香坂(2001年)
- 鮨 木島(2015年)
- 鮨 かず矢(2015年)
- 鮨 品川(2017年)
- 鮨 やま咲(2018年)
- 鮨処 はやし(2020年)
- 割烹すし のりを(2020年)
間違い無く、現在の福岡の鮨シーンを盛り上げている流派です。
そして、「吉冨寿し」は1979年に創業し、昔から定評のある「江戸前&福岡折衷型」の鮨店です。親方の吉冨等さんは、東京浅草の「弁天山美家古寿司」で感銘を覚えてから、江戸前鮨に向き合うことを決めたそうです。
「弁天山美家古寿司」は1866年に創業された江戸前鮨の源流に近い名店です。「吉冨寿し」出身の職人さんは少ないものの、プロの職人さんのファンが多く、「福岡の江戸前鮨」の地位を高めた名店の系譜だと言えます。
ちなみに、江戸前鮨の系譜をもっと知りたい方は、僕のブログ記事をご参照頂ければ幸いです(「弁天山美家古寿司」も説明すると長くなるので…)。
「やま中」出身の「鮨 香坂」の香坂誠二さんは、福岡で鮨人気が高まる遥か前の、2001年に独立した職人さんです。「やま中」の系譜らしくリーズナブルな価格帯のランチをされていますが、個性と技術を兼ね揃える内容。使用する魚介は九州産ばかりなので、県内外の人が楽しい鮨店です。
「鮨処 石ばし」の石橋哲人親方は、名門「吉冨寿し」で修業された後、なんと24歳の時にオープンした俊英です。技術があるのに物腰は穏やかで、癒し系。「吉冨寿し」の仕事を継承し、さらにモダンに発展させた鮨を頂けます。修行先からの工夫を感じると、鮨の系譜の大切さが分かります。
「鮨 唐島」の唐島裕親方は、ご実家が鮨店でありながら日本料理店で修業した経歴を持ちます。福岡で予約困難とされた「鮨 安吉」で仕上げを行い、日本料理と福岡流の鮨の融合を行っています。純粋な福岡鮨の系譜ではありませんが、上記2点との違いがハッキリ分かるので紹介します。
東京の鮨店の系譜とは
東京のお店を系譜に持つお店でご紹介するのは以下の3軒です。
- 鮨 田可尾(奈可田、1997年オープン)
- 鮨 さかい(海味、2013年オープン)
- 枯淡(鮨はしもと、2021年オープン)
こちらもカッコの中は、修行先と独立された年です。
最も歴史が長い「鮨 田可尾」の親方・高尾友之さんは、東京の名店「奈可田」で修業されました。「奈可田」はかつて「銀座の御三家」と呼ばれ、京橋「与志乃」、銀座「久兵衛」とともに名店とされました。
高尾親方は、東京の修業後に福岡市中央卸売市場で仲卸として働いたキャリアも持ちます。写真撮影NGのお店なのでネット上の情報は少ないものの、熟練の目利きと握りの技が光る「隠れた名店」です。
「鮨 さかい」の親方・堺大悟さんは、東京で絶大な人気を誇っていた「海味(うみ)」で修業されました。「海味」の親方である長野充靖さんは早逝されてしまいましたが、技術は堺親方に引き継がれました。
堺親方は、間違い無く福岡の鮨人気を一気に高めた第一人者です。紹介する店舗の中で最も高額になりますが、福岡の鮨を語る上で無くてはならない存在。全国的に考えても卓越した腕前の職人さんです。
「枯淡」の親方・野口和暉さんは東京の「鮨はしもと」で修業されました。「鮨はしもと」は日本屈指の名店である「日本橋蠣殻町すぎた」の系譜です。
杉田親方、橋本親方ともに東京では圧倒的な人気を誇っており、予約の難易度はトップクラス。野口親方は紛れも無い杉田マインドを継承し、福岡の他店にはない魅力を早くも確立されました。予約が取れる内に訪問した方が良い一軒です。
【福岡の鮨店の系譜】おすすめ高級鮨(寿司)店3店舗
それでは、各店舗をご紹介します。まずは、福岡のお店3軒になります。
鮨 香坂(博多区博多駅東)
店名 | 鮨 香坂 |
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営業時間 | 12:00〜14:00 17:30〜20:00 ※定休日:月曜 |
所在地 | 福岡県福岡市博多区 博多駅東3丁目9−3 |
アクセス | GoogleMap |
「鮨 香坂」は鮨店としては珍しい、東比恵にあります。店内の雰囲気は落ち着いていて、肩の力を抜けるカジュアルな印象もあります。なので、若い人にオススメの一軒!
鮨の生命線であるシャリ(酢飯)は小粒で、はらっとほどける良い炊き加減。味付けはまろやかで、塩気は強くなく、酸味は穏やか。方向性的に老若男女誰もが落ち着く味わいのシャリです。
使用する魚は地ものと九州他県のものが中心で、お酒も地酒メインで嬉しいです。個性的な調味料使いをされるため独創性もありますが、熟成を巧く用いてモダンな江戸前鮨のエッセンスも採り入れています。
鮨処 石ばし(中央区赤坂)
店名 | 鮨処 石ばし |
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営業時間 | 12:30〜14:00 17:30〜20:30 月曜のみ:17:30〜20:30 ※定休日:日曜 |
所在地 | 福岡県福岡市中央区赤坂1丁目2−6 赤坂パインマンション 1f |
アクセス | GoogleMap |
「鮨処石ばし」は飲食激戦区の警固エリアにあります。お店は少し年季の入ったビルに入っていますが、店内はフルリノベしているので、きっちりデートにも使えます。照明は控えめで、しっとりしています。
石橋親方のシャリは赤酢を用いつつ、まろやかな味の方向性。見た目は横井醸造の「與兵衛」が色濃く出ているため色黒ですが、酸味や塩気は穏やかです。炊き加減は硬めですが、「アルデンテ」ではなく、もっちりしているので、お米の甘みを感じられます。
使用する魚は全て九州のものを用いているので、郷土性があって面白いです。そこに正当派の江戸前仕事を施すので、江戸前と福岡の見事な融合だと思います。味や見た目のパンチが求められがちな世の中ですが、こちらは本当の鮨好きならば魅力を実感するお店です。
鮨 唐島(中央区赤坂)
店名 | 鮨 唐島 |
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営業時間 | 18:00〜23:00 |
所在地 | 福岡県福岡市中央区赤坂3丁目 1−番2号 Ⅱ101 大東ビル |
アクセス | GoogleMap |
「鮨 唐島」は近年お鮨屋さんが増加する、桜坂エリアにあります。アプローチから内観まで非常に優雅で、上質な空間です。お料理に当たるライトの位置まで計算されていて、現代的。
親方は輝かしい経歴も相まってオープン早々にスターダムにのし上がりました。シャリは硬めの炊き加減で、酸味はそれなりに強めで、塩気は穏やか。温度やほどけ加減も良く、完成度が高いシャリです。
筆者が訪問時点では基礎的な部分で気になる点がありましたが、常連さんから「どんどん美味しくなっている」と聞いています。鮨職人であるお父様も漬け場に立たれているので、ご指導があるのかと思います。自身も再訪したいと考えている一軒です。
【東京の鮨店の系譜】おすすめ高級鮨(寿司)店3店舗
では次に、東京で修行された職人さんのお店3軒をご紹介します。
鮨 田可尾(中央区渡辺通)
店名 | 鮨 田可尾 |
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営業時間 | 17:00〜23:00 定休日:日曜 |
所在地 | 福岡県福岡市中央区 渡辺通5丁目15−4 |
アクセス | GoogleMap |
鮨を食べ慣れてきた方に是非ともオススメしたい一軒です。駅から少し離れた場所でひっそりと営んでおり、写真撮影NGですが、鮨は抜群に美味しいです。鮨と魚の造詣の深さに驚かされる親方で、時間も楽しい。
親方のシャリは理想的な人肌の温度に保たれており、口の中ではらりと上品にほどけます。味付けは酸味がほんのり強めに利いていて、握りメインのお店ながら全く食べ疲れません。
目利きを出来る鮨職人さんが少なくなっている時代に、大切な本物の鮨を伝えてくれるお店。〆る、漬ける、煮ると言った江戸前の仕事は全て精度が高く、これぞ職人!これぞ江戸前鮨!と感じさせてくれます。
鮨 さかい(中央区西中洲)
店名 | 鮨 さかい |
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営業時間 | 【火~金】 昼 12:00 ~ 夜 18:00 ~/20:30 ~ 【土】 昼 12:00 ~ 夜 17:00 ~/19:30 ~ |
所在地 | 福岡県福岡市中央区西中洲3−20 LANEラウンドビル 2F |
アクセス | GoogleMap |
西中州の落ち着いた一角にあり、瀟洒な雰囲気です。外観も内観も上質で、贅沢な時間を空間的にも過ごすことができます。超人気店でありながら、複数回転制で、2号店の「我逢人(がほうじん)」も出されたため、訪問難易度はそこまで高くない印象です。
堺親方の赤酢のシャリは非常に美味しく、タネとの相性を考え尽くされています。味付けだけでなくサイズ感や温度、硬さなども外れたことがありません。
使用しているタネも流石一流店と感じさせるクオリティ。さらには仕事も秀逸で、毎回非の打ち所がないのは奇跡のように感じます。
枯淡(中央区桜坂)
店名 | 枯淡 |
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営業時間 | 11:30〜/17:30〜 定休日:不定休 |
所在地 | 福岡県福岡市中央区桜坂1丁目5−15 |
アクセス | GoogleMap |
桜坂の閑静な一角にあり、日本料理店のような設えです。期待を高める外観、期待を裏切らない内観は極めて上質。コロナ下のオープンなのに1年経たずして超人気店になり、系譜の威力を感じます。
野口親方のシャリは赤酢で、もっちり感を感じさせつつ、ぱらりとほどけ、温度は温かめ。1貫目から美味しい!と感じさせるシャリです。酸味も塩気も穏やかで食べ疲れず、タネを引き立て続けるシャリです。
使用する魚介については、九州のものに加えて全国のものも使用。仕入れ的に地元の人も旅行客も楽しめるラインナップで、全方位死角無しなご当地江戸前鮨店だと感じます。
リーズナブルでランチにおすすめしたい福岡の鮨(寿司)店
鮨はもともとランチに伺って自分の好みを見極めてから、夜にお伺いするのが鮨好きにとってのセオリーでした。
しかし、現在は「営業は夜のみ・お任せ一本」のお店が増えたため、ランチ鮨のお店は貴重…。しかし、福岡県はランチ営業されている鮨店が多い県なので、活用しない手はありません。
前述の「吉冨寿し」の系譜にあるお店の多くはランチにリーズナブルなお決まりを提供されています。そして、「鮨処 石ばし」はランチのコストパフォーマンスが絶大です。
紹介していないお店だと、「鮨 しま」「すし副島康広」のコストパフォーマンスが高いと聞いています。
まとめ|福岡は鮨激戦区!気になったお店があれば行ってみて!
福岡は全国的にも鮨のバリエーションが広く、今後も間違い無く人気が高まる土地です。そのため予約難易度が高いお店が多数あるのも事実ですが、気鋭の若手も続々出てくるところが面白い。
是非とも、若くして才能あふれる職人さんを発見して、末永く応援してあげてください!
記事を読んで頂きまして、ありがとうございます。鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)でした。