ランドセルは”からう”もの。
福岡県民の皆さん…!「からう」が標準語ではないという事実、ご存知でしょうか。
福岡県民が鞄やランドセルなどを「背負う」という意味で使う「からう」は、九州各地で使われている方言です。特に福岡、長崎でよく使われており、博多弁のひとつとも言われています。
ランドセルを”背負う”では、全くしっくりこない福岡生まれ・福岡育ちの筆者が「からう」について掘り下げます!
からう=背負うは博多弁・九州方言と気づいていない人多数!?
「からう」じゃなかったら何て言うと・・・?
これ以外に適切な言葉が見つからないほど、福岡県民に染みついている方言「からう」は、実際に方言だと知らずに使っている人もたくさんいます。
こちらはTwitter上で見られた福岡県民の反応です。県外で「からう」と言ったら通じなかった・・・という経験から「からう」が方言だと大人になってから知る人も大勢います。
かく言う筆者も、大学生までは「からう」が方言だとは知りませんでした。
東京出身の友人が「リュックを背負う」と言っているのを聞き、「背負う?!しゃれんとんしゃ〜(お洒落だな〜)」と思ったものです。
からうは古語である「担う(かるう)」が訛ったことが語源
「からう」の語源は「かるう」?!
1603年に出された、当時の日本語辞典である日葡(にっぽ)辞書には、当時の口語として「担う(かるう)」という言葉が記録されています。この「担う(かるう)」が「からう」の語源です。
日葡辞書は長崎で刊行され、口語を中心に収録されている日本語辞典です。そのため「かるう」という言葉が、当時の長崎で話されていたことがわかります。
時代が流れるにつれて「かるう」が訛り、福岡をはじめとする九州各地では「からう」という方言になりました。
からうを最も方言として使う地域は福岡・長崎
九州の人には「からう」だいたい通じるんやね〜!
「からう」が標準語ではないと信じたくない福岡県民には酷ですが「からう」に関するある調査をご紹介します。
Jタウンネットが「からう」の全国での認知度を調査した結果です。
意味を知っていた人の割合 | 都道府県 |
100% | 佐賀、熊本、宮崎、鹿児島 |
90%台 | 福岡、長崎 |
60%台 | 山口、東京 |
33%ほど | 大分 |
※参考:Jタウンネット
九州以外では、九州に近い山口県、そして九州出身も多い東京都しか「からう」を知っている人はいないという結果になりました。
また、使っている人の割合は、福岡と長崎が特出しています。
福岡、長崎での認知率も非常に高く、福岡では96.5%が、長崎では93.8%が意味を知っていた。また、使ったこともあるのは福岡で89.5%、長崎で93.8%だった。長崎では、意味を知っていた人は全員、使ったこともあったということだ。
引用:Jタウンネット
ちなみに、小学館が発行している『日本方言大辞典』では「からう」は、山口県、福岡県、長崎県、熊本県で使われている方言として記載されています。
からうの日常会話での使い方(例文)
「からう」は日常会話で頻出の博多弁やけん覚えとってね。
生粋の博多っ子である筆者が自然に使える「からう」の例文をドドンとご紹介します!
【博多弁”からう”の例文】
- ランドセルば”からう”
- 重いリュックば”からって”行った
- “からわん”で大丈夫と?
- ちゃんと”からっと”かんといかんって
- 抱っこ紐で赤ちゃん”からう”けん
- しっかり”かろー”ときなさい
荷物を背負うときには、絶対に「からう」です。時には、赤ちゃんをおんぶするときにも使います。
ランドセルば”からう”
【訳】ランドセルを背負う
福岡県民にとって、ランドセルと言えば「からうもの」です。逆に「からう」以外にしっくりくる言葉が見つかりません。
それほど、”ランドセル”と”からう”は一番使う組み合わせなのです。
【例文】
- 「ランドセルばちゃんとからいなさい」
(訳)「ランドセルをしっかり背負いなさい」 - 「ランドセルはこうやってからうとよ」
(訳)「ランドセルはこんな風に背負うんだよ」
ランドセルを雑に扱う小学生男子やランドセルを買ってもらったばかりの1年生には、こう言いましょう。
重いリュックば”からって”行った
【訳】重いリュックを背負って行った
「からって」も”からう”と同じように「背負って」というニュアンスで使います。
【例文】「あんた、こんな重いリュックばからってから〜大丈夫ね?」
【訳】「あなた、こんなに重いリュックを背負ってしまって〜、大丈夫?」
このように「からってから〜」と早口言葉のようになることもあります。こちらは、中高年以上の女性が重い荷物を持っている人を心配している場面の例文です。福岡県民ならこのニュアンスが伝わるはず・・・!
“からわん”で大丈夫と?
【訳】背負わなくて大丈夫なの?
こちらは、重い荷物を両手に抱えている人に言いたくなる例文です。ニュアンスとしては「重いから両手に持つのではなくて、背負った方がいいんじゃない?大丈夫?」といった感じです。
もっと博多弁を強めると、こうなります。
【例文】「からったほうがいいっちゃない?」
【訳】「背負ったほうがいいんじゃない?」
ちゃんと”からっと”かんといかんって
【訳】きちんと背負っていないとダメだって
「ちゃんとからっとかんといかんって」まるで博多弁の早口言葉のような使い方です。また、語尾が「〜と」に変わるのは博多弁あるある、まさしく博多弁の特徴を表しています。
「からう」と同じように、福岡県民が方言だと気付いていない「なおす(片付けるという意味)」を使った最上級の方言例文はこちらです。
【例文】「いつまでもランドセルばからっとかんではよなおさんね」
【訳】「いつまでもランドセルを背負ってないで早く片付けなさい」
抱っこ紐で赤ちゃん”からう”けん
【訳】抱っこ紐で赤ちゃんをおんぶするから
「からう」は、おんぶする・おぶるという意味でも使うことがあります。
からう=背負うという意味なので、背中に赤ちゃんをおんぶしている状態も「からう」なのです。
しっかり”かろー”ときなさい
【訳】しっかり背負っておきなさい
年配の方の中には、「かるーとく」「かろーとった」など、語尾を伸ばす使い方をする人もいます。
【例文】「〇〇ちゃん、ランドセルばかろーとったねぇ、もう1年生になるったいね〜。」
【訳】「〇〇ちゃん、ランドセルを背負ってたねぇ、もう1年生になるんだね〜。」
こちらは「近所のおばあちゃんが、小さい頃から知っている子どもが、ランドセルを背負っているのを見かけ、感慨深くなっている場面」で言いそうな例文です(長い)。
筆者の周りには「かろーとく」という使い方をする人はあまりいませんが、それでも意味はしっかり伝わります。
まとめ|からうは立派な方言だった!
いっそのこと標準語にしてほしい博多弁No.1!
「からう」は、福岡や九州でしか通じない立派な方言でした。県外の人と話すときは、気恥ずかしいですが「背負う」を使いましょう。
個人的には、ランドセルは「からう」以外にしっくりくる言葉がないので、ぜひ「からう」を全国区の認知度に押し上げたいです!